小説トリッパー特別対談 井上敏樹×虚淵玄 感想
今日の朝から平成仮面ライダー16作目の『仮面ライダードライブ』が始まります。
楽しみだなーとか思ってたら、昨日、息子6歳が「ママ、平成ライダーで何が一番好き?」て聞いてきました。「ギルス!圧倒的にギルスが一番好きだね!」って答えました。
で、ガイムも終わり、どちらかというと最近はライダー熱も冷めてしまった子供らに、久しぶりにそれと同じ質問をしました。
「一番好きなのははクウガ!二番は、えっと、、、、ママ♡」とか言ってるクウガ信者の息子6歳はおいといて、娘6歳(小一/イケメン好き)がおもしろいこと言いました。『一番はアギト、二番は龍騎、三番はシャンゼリオンかな。』
シャンゼリオンはライダーじゃねぇ!!と「サバじゃねぇ!」風に言ってみましたが、娘は超光戦士シャンゼリオン - Wikipediaがけっこう好きです。まぁ、なんとなく好みがわかります。翔一くんにしても名護さんにしても、井上敏樹さんの作るキャラがけっこう好きみたい。
で、最近、その井上敏樹さんと、鎧武の脚本でおなじみ虚淵玄さんの対談『平成仮面ライダーとは何か』を読みました。
小説 TRIPPER (トリッパー) 2014秋 2014年 9/30号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2014/09/18
- メディア: 雑誌
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内容は全体的に、『鎧武』を頑張って作りあげたぜって虚淵氏が鼻息荒く話してるのを、井上氏が「ふ〜ん」って流して聞いてるような印象がありました。
脚本どうこうの前に、周りの注文とかがけっこう煩わしかったっていう事を言ってた感じしたなぁ。
虚淵『平成ライダー初期の頃は、玩具メーカーが「ライダーをおもちゃ化」していましたけど、今は「おもちゃをどうやってライダー化するか」って発想に切り替わってます。近年は必死こいてライダーを戦隊ものに近づけようとしてるのかもしれませんね。』
ねー。本当にそう思います。最近のライダーは『玩具を売るためのライダー』って感じが、すごくするもんね。ヒーローがかっこいいから玩具が売れるとかじゃなくて、その逆な感じ。で、ドライブはとうとう変身時にブレスも装着するんだもの、どんどん戦隊に近づいてる感じしますね。
でその虚淵さんのライダー、『鎧武』の1年間を見て個人的な感想ですが、中盤はワクワク感が凄くあったんですけど、なんか最後は「???」って感じでした。
自分は、評論家でもなければ平成しかしらない新しいライダーファンなので上手く言えないし、なんかモヤモヤしてたんですけど、今回の対談読んでて腑に落ちました。
虚淵「鎧武では主人公をヒーローというよりは身近な一般人にしようという考えが最初から僕のなかにあったんです。こいつの個性は何だとか、得意技は何なのかとか、そういうのがない人を主人公にしましょうよと。でも制作側にはエキセントリックなキャラ付けから入りたいっていうのがあったみたいなので、戸惑っていましたけど。とにかく主人公のキャラを立てたいと、誰もがいいました。僕は「何の変哲もない人が環境に振り回されて結局ヒーローにならざるを得なかった話にしよう」と当初から主張していたんですが、あまり好かれる方向性じゃなかったみたいです(笑)」
井上「でも俺、『アギト』のときもそんなような発想だったよ。キャラ付けキャラ付けってみんな言うけど、言う程簡単じゃないし、わざとらしくなるよな。ヒーローのキャラ付けなんて出し尽くされてるんじゃない?」
虚淵「そうかもしれませんね。それに子供がベルトを付けて遊ぶ以上、あんまり自分たちから遠い存在のキャラにしすぎちゃいけないのかなって気がするんですよね、今どきは。」
井上「俺はヒーローとしてのキャラ付けよりも、個人としてのキャラ付けの方が大切だと思ってる。戦ってるときじゃなくて、むしろ日常がどんなやつなのかってこと。ヒーローとしてのキャラ付けを今の時代にやっても意味がないよ。」
虚淵「日常ですか、、、」
井上「よく日常を描かないヒーローものもあるんだけど、つまんないよね。要は世界に入っていく、とっかかりになるのが「日常」じゃない。ものを食べるシーンとかね。今は食いもんでキャラを売ることはやり尽くしてる感があるけど、昔からよくあったでしょ。戦隊ものにおいて「カレーが好き」とかさ(笑)」
そーそそそそそ、それだぁ!
初期の頃のコウタさんは、部屋で変身する練習してみたり、バイトの面接いってみたり、そういう日常があってなんか親近感あったけど、途中からなくなってきちゃったね。
ユグドラシルの大人達、特に呉島主任は、仕事では堅物で嫌われる中間管理職なのに超ブラコンで、シャルモンでケーキとか食べて、でっかいロボが暴れてる!と連絡した部下を「みんな疲れてるんだな…」と心配する優しさがあって、そういう日常があってのライダーだったから魅力を凄く感じたのかもしれない。しかもシャワーシーンもおしげもなく放出してしまったッッ。
呉島主任と斬月、超応援してたよ。あと、プロフェッサーの私服もよかったよ!半ズボン!
何が面白いか面白くないかの感じ方は本当に人それぞれで、完全に個人的なところであって、必ずしも井上さんの言う事が正しいわけじゃない。でも、私も井上ライダー好きだから、そう感じてしまう。個人の日常が見えるヒーローは魅力的だなぁって。
たとえば、上で井上氏が言ってる『アギト』の話。
ちなみに、娘6歳はライダーで一番好きなのはアギトの「しょういち」とか言ってるんだけど、例えば、
↑みんなのためにトマトケーキつくるライダー。
↑突然の怪人出現に、顔にクリームつけたまま出動するライダー。
↑クリームつけたまま、すっげぇ真面目な顔で変身するライダー。
↑戦い終わって、顔にクリームついてるの指摘されて照れるライダー。
「も〜、翔一くんはしょうがないなー♡アハハ」
ってなるらしい。
(女児をお持ちの方はわかると思いますが、女児って小さくても女よね。そりゃ、母ちゃんには「マズイからいらない」つって突き返す菓子も、好きな男子に貰ったらその場で笑顔で食べるんですよ女子力高いんですよ)
炊事、洗濯、掃除、畑仕事にDIY。「将来いいお嫁さんになるぞ!」と居候先の教授に言われてる優しいイケメンが、突然真剣な顔して変身するっていう。アギトは日常と戦ってるときのギャップが凄くてね、ギャップ萌えっていうんですか?好きみたいです。
井上さんのキャラでは他にも、555のクリーニング屋の生活とかも日常だろうし。シャンゼリオンなんてヒーロー(職業:探偵)が借金まみれで遊びあるいて街で女をナンパしてるし。サブで入った龍騎の、北岡弁護士とゴローちゃんの暮らしっぷりも良かったね。
だから、『鎧武』も、せっかくフルーツパーラーとかあったんだから、もっとヒーロー達の日常が見たかったなって思います。
コウタさんのバイトしてる姿ももっと見たかったし、コウタさんと姉ちゃんが仲良く一緒にごはん食べてる姿ももっと見たかったな。そうすればラストの危機感や姉ちゃんとの別れの悲しさがもっと伝わって来たかもーって思いました。
↑コラボ回はそんな日頃のコウタさんが見えてよかったです。
それからもうひとつ気になったとこ、
虚淵「役者がオーディションで決まったのが、何話分か初稿があがってからなんですよ。あえて言うなら、今回そこが反省点です」
井上「役者が決まってから脚本に入る撮影なんて滅多にないよ」
虚淵「もう少し役者さんと話す機会が多ければよかったって気はしますよ。ストーリー上、けっこう大事ななところを疑問のまま演じさせてしまったんで。」
井上「俺はけっこう役者と話すよ。役者と話したりオンエアを見たりして、どんどんキャラを変えていくし、あがった画を見てコイツいいなと思ったら出番を増やしていくしね。逆にダメだったら減らしてくこともある」
自分の作る話と、その後オーディションで決まった役者がなんかギャップがあって、役者のパーソナリティが見えた頃には修正が間に合わなかった、特にバロン。みたいな事を虚淵氏は『鎧武』の反省点としてるんだけど、そういうギャップこそ、ヒーロー個人の日常に活かしてくれたらより魅力的なキャラになったのにーって思いました。
例えばカイトさんは実はスイーツ大好きで、どこかで真顔でケーキなんか作っちゃってね。城之内に見せつけるとかさ。
カイト「これが強者のスイーツだ」
ザック「フッ…さすがはカイトだぜ…。」
ペコ「カイトさんは何やっても一番だ!」
って。そういうちょっとした日常が少しでも見られたら、シリアスなバロンとスイーツ好きなカイトさんのギャップが楽しめるし、元パティシエだと言う事を知る役者さんのファンの方もちょっと嬉しいんじゃないかなーとか思いました。『ゆたcafe』じゃなくて本編で見たかったかな。あと、半ズボンでもいい!カイトさんの私服も見たかったよ!(どこかであったかな、、、私の見落としかな)
で、あと7時間後に始まる「仮面ライダードライブ」のメイン脚本家、『単純にかっこいいヒーローが好き』と語る三条陸先生が、昨年末に発売された本
語れ!平成仮面ライダー (ベストムックシリーズ・32)で、こう言ってました。
「機会があれば、役者の人たちには直接会いに行きます。実際に話をしてみて、人となりを知る事で、演じるキャラの造型に弾みがつくってこともあります。キャラが変わる、とかじゃなくて、キャラのこんな一面がだんだん見えてきた、みたいに描きたい。観ている人にもそういうプラスアルファ的要素が増えると、嬉しいと思うんです。」
三条さんがこう言ってるように、仮面ライダードライブも、主人公や悪役側のキャラに幅をもたせて、魅力あるキャラクターが増えればいいなーと、楽しみだなーと思って朝を待っています。
ベルトさん! 期待してるよ!!